後発白内障手術について
病名と病態
白内障の手術後、数ヶ月から数年が経過すると、後嚢(眼内レンズが入っている袋の後ろ側の部分)が混濁してくることがあります。
後嚢の混濁により光が目の奥に届きにくくなります。
これを後発白内障といいます。
後発白内障は白内障術後5年で約20%の人に生じるとされており、ぶどう膜炎や強度近視、糖尿病などの基礎疾患を持つ方は発生頻度が増加します。
後発白内障により、視力低下、霧視(かすんで見える)、羞明(まぶしく見える)といった症状を自覚します。
治療の目的
YAGレーザーというレーザーを後嚢の混濁部位に照射し、後嚢を切開することで、光の通り道を確保します。
治療の内容
麻酔の目薬をした後、眼にレンズを載せて、顕微鏡で観察しながらレンズ越しに後嚢へレーザーを照射します。
治療は点眼による局所麻酔で座位の姿勢で行い、治療時間は通常10分程度です。
治療の合併症
1. 虹彩炎
レーザー照射により目の中に炎症が生じます。
炎症により飛蚊症(虫のような黒い影が飛んでいるように見える)を自覚しますが、通常は数日で治ります。
炎症を抑えるため、治療後1週間はステロイド薬(抗炎症薬)の点眼を行います。
2. 一過性眼圧上昇
レーザー照射により炎症が生じるため、一時的に眼圧が上昇することがあります。
レーザーの前後で眼圧を下げる目薬をして、眼圧上昇を抑えます。
3. 黄斑浮腫
レーザー照射により炎症が生じるため、黄斑浮腫が発生し、視力が低下することがあります。
黄斑浮腫が生じた場合は、黄斑浮腫の治療薬である抗VEGF抗体やステロイド薬の注射を行います。
4. 網膜裂孔・網膜剥離
レーザー照射により硝子体(ゲル状のコラーゲン組織)が収縮して、網膜が牽引され網膜裂孔(網膜に穴が開く)や網膜剥離(網膜が脈絡膜から剥がれる)が生じることがあります。
網膜裂孔には追加のレーザー治療を、網膜剥離には硝子体手術を行います。
治療後の留意点
レーザー後の目薬
レーザー後は炎症を抑えるために1週間ステロイドの目薬をします。
レーザー後の生活
レーザー後の入浴・洗顔・洗髪・仕事・車の運転などの制限は特にありません。
気になる点がありましたら職員にご相談ください。
代替可能な治療
後発白内障はYAGレーザー照射以外の代替可能な治療はありません。
治療を行わなかった場合に予想される経過
自然経過では後発白内障の進行を抑えることができません。
進行すると後嚢の混濁が強くなり、視力低下、霧視(かすんで見える)、羞明(まぶしく見える)といった症状が強くなります。