緑内障手術(レーザー虹彩切開術)について
病名と病態
緑内障発作とは、房水(目の中の水)の出口である隅角(角膜と虹彩の間)が様々な原因で閉塞してしまい、房水が目の中に溜まり、眼圧が急上昇してしまう病気です。
眼圧上昇により視力低下、霧視(かすんで見える)、充血、目の奥の痛み、頭痛、吐き気といった症状が生じます。
眼圧が高い状態が続くと、目の神経が傷んでしまい、重篤な視力障害・視野障害が生じて、最悪の場合失明に至ります。
治療の目的
レーザーを虹彩の付け根に照射し、虹彩に穴を開けて房水の通り道を作り、隅角の閉塞を解除します。
治療の内容
麻酔の目薬をした後、眼にレンズを載せて、顕微鏡で観察しながらレンズ越しに虹彩へレーザーを照射します。
治療は点眼による局所麻酔で座位の姿勢で行い、治療時間は通常15分程度です。
治療の合併症
1. 虹彩炎
レーザー照射により目の中に炎症が生じます。
炎症により飛蚊症(虫のような黒い影が飛んでいるように見える)を自覚しますが、通常は数日で治ります。
炎症を抑えるため、ステロイド薬(抗炎症薬)の点眼を行うことがあります。
2. 一過性眼圧上昇
レーザー照射により炎症が生じるため、一時的に眼圧が上昇することがあります。
レーザーの前後で眼圧を下げる目薬をして、眼圧上昇を抑えます。
3. 前房出血
虹彩に穴を開けるため、虹彩の血管から出血することがあります。
通常はレーザー照射時に使用しているレンズで目を圧迫することで止血可能です。
4. 角膜混濁
レーザー光の熱エネルギーによって一時的に角膜が混濁することがあります。
通常は時間の経過により混濁は消失します。
5. 白内障
虹彩の後ろにある水晶体にレーザーのエネルギーが届いてしまうと、白内障が進行することがあります。
6. 虹彩後癒着
レーザー照射による炎症が持続すると、虹彩と水晶体がくっついてしまうことがあります。
瞳孔の大きさを調節することが出来なくなるため、明るい場所でまぶしく感じたり、暗い場所で見えにくく感じたりします。
7. 水疱性角膜症
レーザー照射により角膜内皮細胞が減少して、最悪の場合は水疱性角膜症を発症し、角膜が混濁し視力が低下します。
水疱性角膜症を発症した場合は角膜移植が必要になります。
治療後の留意点
追加手術の可能性
治療により通常は眼圧が低下しますが、レーザー照射後も眼圧が低下しない場合や、一度低下してもしばらくして再度眼圧が上昇することがあります。
その場合は白内障手術が必要になります。
レーザー後の生活
レーザー後の入浴・洗顔・洗髪・仕事・車の運転などの制限は特にありません。気になる点がありましたら職員にご相談ください。
代替可能な治療
白内障手術
白内障手術を行うことで、目の中の空間が広がるため、隅角の閉塞が解除され、眼圧が下降します。
一度白内障手術を行えば、隅角が閉塞することがなくなるため、緑内障発作の根本治療になります。
ただし、緑内障発作時は角膜が混濁していたり、虹彩が弱ったりしており、白内障手術の難易度が非常に高くなります。
さらに緑内障発作により疼痛が生じており、痛みへの耐性が下がっているため、白内障手術中に激しい痛みを感じることがあります。
そのため当院では緑内障発作時の白内障手術は基本的にお勧めしていません。
緑内障発作時にはレーザー虹彩切開術を行い、ある程度状態が落ち着いたところで改めて白内障手術を行うことを推奨します。
治療を行わなかった場合に予想される経過
自然経過では緑内障発作が解除されず、高眼圧が持続します。
目の神経が障害され、重篤な視力障害、視野障害が生じ、最悪の場合失明に至ります。