緑内障手術(選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT))について
病名と病態
緑内障とは、網膜の神経が障害を受けて視野が欠けていく病気で、眼圧の上昇がその原因の一つとされています。
放置すると症状が進行し、日常生活に支障をきたします。
眼球内部は房水と硝子体が充満しています。
房水は絶えず毛様体から産生され、線維柱帯から排出されています。
この房水の産生と排出のバランスで眼圧が保たれています。
緑内障の方は線維柱帯が目詰まりを起こしていて、房水の排出が減少しているため、眼圧が上昇しやすくなっています。
治療の目的
目詰まりを起こしている線維柱帯にYAGレーザーを照射して線維柱帯の目詰まりを解消し、房水の排出量を増やすことで、眼圧を下降させます。
治療の内容
眼圧上昇を抑える目薬と麻酔の目薬をした後、眼にレンズを載せて、顕微鏡で観察しながらレンズ越しに線維柱帯へレーザーを照射します。
治療は点眼による局所麻酔で座位の姿勢で行い、治療時間は通常5分程度です。
治療直後に再度眼圧上昇を抑える目薬をします。
治療の合併症
1. 結膜充血・霧視・頭痛
レーザー照射により炎症が生じるため、術後3日間~1週間程度、結膜の充血・霧視(ぼやけて見える)・頭痛が生じることがあります。
炎症が引くとともに自然に治るため様子を見てください。
2. 一過性眼圧上昇
レーザー照射により炎症が生じるため、一過性に眼圧上昇が見られる場合があります。
レーザー照射前後に眼圧上昇を抑える目薬をして対処します。
治療後の留意点
レーザーが効かない人がいる
レーザーの有効性は約80%です。
逆に言えば約20%の方には効果がありません。
効果がある人/ない人を事前に予見することは出来ません。
レーザーの再照射
レーザーの効果は時間とともに減少していくことがありますが、レーザーの再照射も可能です。
ただし、2回目のレーザーの持続時間は1回目の約半分程度です。
1回目のレーザーが無効だった方は再照射の対象外です。
レーザー後の目薬
レーザー後に新たな目薬を追加する必要はありませんが、今までさしていた目薬は引き続き継続してください。
レーザー後の生活
レーザー後の入浴・洗顔・洗髪・仕事・車の運転などの制限は特にありません。
気になる点がありましたら職員にご相談ください。
緑内障そのものが治るわけではない
緑内障は神経の病気であり、完治が見込める病気ではありません。
治療はあくまでも眼圧を下げて緑内障の進行速度を遅くするのが目的であり、治療をしても緑内障が完治したり、視野や視力が改善することはありません。
代替可能な治療
1. 点眼
目薬の種類を変更したり、目薬の数を増やしたりすることで、眼圧を下げます。
目薬の効き目には個人差があり、眼圧が下がらなかったり、アレルギーにより使用できない場合があります。
2. 流出路再建術
目詰まりを起こしている線維柱帯を切開して、房水の排出量を増やすことで、眼圧を下降させます。
濾過手術に比べて安全性が高いですが、眼圧下降効果はやや弱いため、初期の緑内障や目標眼圧があまり低くない緑内障に対して行います。
3. 濾過手術(緑内障治療用インプラント挿入術(プレートのないもの)を含む)
線維柱帯を切除して目の中と外を交通させ、新たな房水の出口を作ります。
流出路再建術よりも眼圧下降効果が大きいですが、手術時間が長く合併症も大きいです。
4. 緑内障治療用インプラント挿入術(プレートのあるもの)
アーメド緑内障バルブという器具を強膜に縫い付け、バルブから出るチューブによって目の中と外を交通させ、新たな出口を作ります。
濾過手術で眼圧が下がらなかった場合や、重症の緑内障の場合に行う手術です。
5. 毛様体光凝固術
目の外から毛様体にレーザーを照射して、房水の産生を抑え、眼圧を下げます。
マイクロパルス波毛様体光凝固術というものもあり、こちらは房水の排出を増やして眼圧を下げます。
予想以上に房水が作られなくなってしまい、眼球癆(眼球が縮んで、目としての機能を失う)になるリスクがあります。
特殊なレーザー装置が必要で、扱っている医療施設が限られています。
6. 白内障手術
白内障がある場合、白内障手術を行うことで眼圧がわずかに(1-2 mmHg)減少します。
治療を行わなかった場合に予想される経過
自然経過では緑内障の進行を抑えることができません。
加齢とともに緑内障は進行していき、視野障害や視力障害が悪化し、日常生活に支障をきたします。