マキュエイドテノン嚢下注射(網膜静脈閉塞症)について
病名と病態
網膜静脈閉塞症とは、網膜の血管のうち静脈に閉塞が起こり、血管内の成分が血管外に漏れ出し、出血や黄斑浮腫を起こす病気です。
出血により視力が低下する、視野が欠けてみえる、暗く見えるといった症状が起こります。
黄斑浮腫は網膜の中心部にある、ものを見るのに重要な働きをする「黄斑」がむくんでしまう状態です。
黄斑浮腫により視力が低下する、かすんで見える、歪んで見える、といった症状が起こります。
放置すると症状が進行し、日常生活に支障をきたします。
注射の目的
網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫を改善するために、マキュエイドという薬を白目に注射します。
マキュエイドはステロイドの一つで、黄斑浮腫の原因である炎症物質の働きを抑える効果があります。
マキュエイドを目の中に注射し、炎症物質の働きを低下させることで血液成分の漏れを抑え、浮腫を改善します。
注射の内容
消毒と麻酔を行った後、白目(結膜と強膜の間、テノン嚢という部位)にマキュエイドを注射します。
注射は点眼による局所麻酔で仰向けの姿勢で行い、所要時間は5分程度です。
注射の合併症
1. 感染症
マキュエイドには免疫抑制作用があるため、細菌や真菌、ウイルスなどの感染症がある場合、感染症が増悪する可能性があります。
2. 眼圧上昇
マキュエイドには眼圧上昇作用があるため、眼圧が上昇して緑内障が発症、あるいは緑内障が進行することがあります。
3. 白内障
マキュエイドの作用によって白内障が進行する可能性があります。
上記合併症により、現在よりも視力が低下することがあります。
注射後の留意点
結膜下出血
注射後に、結膜(白目)の出血で目が赤くなり、元に戻るまで2-3週間かかることがあります。
結婚式や集会などで写真撮影を控えている場合はご注意ください。
疼痛・異物感
注射後は「ゴロゴロ感」「しみる感じ」「軽い圧迫感」「不快感」などを感じることがありますが、手でこすらないようにしてください。
強い痛みを感じることは通常ありませんが、手術直後に強い痛みを感じる場合は、痛み止めの薬を処方しますので、遠慮せずに職員にお伝えください。
注射後の生活
注射後の点眼の必要は特にありません。
注射後の日常生活の制限も特にありません(洗髪、洗顔、シャワー、入浴すべて可)が、気になる点がありましたら職員にご相談ください。
注射の効果
注射の効果が出るまで数日から1週間程度かかります。
注射の効果には個人差があり、1回で浮腫が改善する人もいれば、複数回の注射が必要になる人もいます。
一旦浮腫が改善しても、時間をおいて浮腫が再発することもあります。
浮腫が改善しても、視力は元に戻らない人もいます。
代替可能な治療
1. 抗VEGF抗体硝子体注射
黄斑浮腫の原因物質の一つである血管内皮増殖因子(VEGF)を抑制する薬を目の中に注射して、黄斑浮腫を抑えます。
2.レーザー光凝固
レーザー光線を浮腫があるところに照射して、浮腫を抑えます。
目の中に新生血管という悪い血管が生じて、出血の危険性が高い時は、出血の予防のために光凝固を行うことがあります。
3. 硝子体手術
網膜前膜という膜によって網膜が牽引されて浮腫が生じている場合や、硝子体出血が生じた場合は、硝子体手術を行います。
注射を行わなかった場合に予想される経過
自然経過では浮腫が改善する可能性は低いです。
浮腫を放置すると網膜に障害が生じて、視力低下が進行します。