網膜光凝固(網膜裂孔)について
病名と病態
網膜裂孔は、加齢や近視、感染、炎症、外傷などにより網膜に裂孔が生じる病気です。
症状は裂孔の場所や大きさ、出血や網膜剥離の合併の有無によって異なりますが、無症状の方もいれば、飛蚊症、視野障害、霧視、視力低下を自覚する方もいます。
治療の目的
網膜裂孔の周囲にレーザーを照射し、網膜と脈絡膜を癒着させることで、網膜裂孔から網膜下への液体の注入を防ぎ、網膜剥離の発症を予防します。
治療の内容
麻酔の目薬をした後、眼にレンズを載せて、顕微鏡で観察しながらレンズ越しに裂孔周囲の網膜へレーザーを照射します。
治療は点眼による局所麻酔で座位の姿勢で行い、治療時間は通常10分程度です。
治療の合併症
1. 黄斑浮腫の悪化
レーザー照射により炎症が生じるため、黄斑浮腫が発生または増悪し、視力が低下することがあります。
黄斑浮腫の治療薬である抗VEGF抗体やステロイド薬の注射を行います。
2. 硝子体出血
レーザー照射により網膜血管が破綻して出血を生じることがあります。
装着しているレンズで目を圧迫することで、ほとんどが止血可能です。
3.レーザー瘢痕の拡大
レーザー照射後、数ヶ月~数年かけてレーザー瘢痕が拡大することがあります。
瘢痕が黄斑まで拡大してしまうと、急激な視力低下や視野狭窄が進行します。
4. 夜盲・視野狭窄
レーザーを照射した部位の網膜は萎縮して機能を失うため、夜盲(夜や暗いところが見えにくい)や視野狭窄(周辺の視界が見えない)を生じることがあります。
治療後の留意点
レーザー後の目薬
レーザー後に新たな目薬を追加する必要はありません。
レーザー後の生活
レーザー後の入浴・洗顔・洗髪・仕事・車の運転などの制限は特にありません。
気になる点がありましたら職員にご相談ください。
手術の可能性
レーザー照射をしても網膜剥離の発生を完全に抑えられるわけではありません。
網膜剥離が生じた場合は硝子体手術が必要になります。
代替可能な治療
1. 硝子体手術
裂孔周囲の網膜が既に剥離していて、レーザーを照射してもレーザー瘢痕が得られない場合は、硝子体手術が必要になります。
治療を行わなかった場合に予想される経過
放置すると網膜剥離が生じて、重篤な視力障害となり、日常生活に支障をきたします。